正義の味方
歌詞の前に歌手が勝手に台詞をつけてはいけなかったのか――。
森進一の「おふくろさん」騒動。これですっかり有名になったのが、今回おカンムリの作詞家であり作家でもある川内康範氏、87歳。この人は映画の脚本など多数を物した。その世界では有名人。政治活動にも足を突っ込んでいる。要するにウルサガタだな。騒ぎの余波でこの歌は、有線放送やカラオケのリクエストが急増した。印税が入ってくるはずだから、「あんたらグルか」と勘ぐりたくもなってしまう。
「おふくろさん」はどうでもいい。実は川内氏、往年のテレビドラマ「月光仮面」の脚本も書いている。主題歌も作詞している。それどころか「恍惚のブルース」や「伊勢佐木町ブルース」の歌詞までも…。それはさておき、「月光仮面」を作る際、川内氏の出した原案、仮題は「踊る仮面」だったというから驚いた。人々の前に踊りながら現れるらしい。果たしてどんな踊りを、川内氏はイメージしていたのであろうか。今となっては知る由もない (ことはないだろう。生きてるんだから)。
面白い。川内氏よ、森進一に因縁をつけている暇があったら、この「踊る仮面」を現代に是非復活させて頂きたい。しかし森進一に対しても、かたくなに門を閉ざしているくらいだから、私ごときのこのささやかな願いなど、川内氏の耳に届くはずもない。やむを得ぬ。勝手に夢を膨らまそう。
踊るリズムは何がよかろう。長唄、義太夫、ウインナワルツ、夕日見つめてハワイアン、雪が降ったらコサックダンス、ルンバにタンゴに盆踊り。いやいや、どれもしっくり来ない……。
その時だった。おお、聞こえて来たぞあのリズム。
ドチャカチャ チャカポコ ドチャンチャ チャカポコ
ドチャカチャ チャカポコ ドチャンチャ チャカポコ
ドチャカチャ チャカポコ ドチャンチャ チャンポン・・・
「踊るサンバ仮面」だ! 三馬鹿麺じゃないよ。強烈なサンバのリズムに乗って、悪者の前に華々しく登場。美人ダンサーたちを従えてひとしきり踊りを披露する。たじろぐ悪人ども。衣装も純白の月光仮面とは違い、金色のマスクに極彩色の羽飾り。金色マントの下でマッチョな体がしなる。そして鮮やかなカポエイラの技で、並み居る敵どもをなぎ倒すのだ。スリルに満ちたアクションの末、悪を懲らしめたサンバ仮面の一行は、さっそうと熱帯雨林のなかへ踊りながら消えていく。しかして、その正体は……。
おっと、こんな愚にもつかぬことを書いて、憂国の士、川内氏から訴えられでもしては堪らない。くわばらくわばら。