「ちょっと変わった本。というか、いや、相当に変わった本というべきだろうか」
という書き出しで「ベケット巡礼」(堀真理子著)という本が紹介されている。英文学者・富山太佳夫氏による書評。昨日の毎日新聞の「今週の本棚」欄に載っていた。
出だしにつられて、つい読んでみると
……例えばこんな話がでてくる。ポルトガルの首都リスボンから電車で30分ほどのところにあるカスカイスという海辺のリゾート地は、どういう理由からか、日本の熱海と姉妹都市である。著者も熱海に住んでいる。そこで、この海辺の町に出かけて、あるホテルに泊まることになる。すると、運よく見せてもらえたゲストブックに、「サミュエル・ベケット、1969年12月」という署名がある。
著者はそのホテルの近くの「地獄の口」と呼ばれる洞窟を見ているうちに、これこそベケットの戯曲『わたしじゃない』(1972年)の霊感源ではないかと考え始める……
……ベケットとユング心理学、ブレヒトとの関係、20世紀のポルトガルを代表する詩人ペソアとの関係(二人ともW・B・イェイツの信奉者であった)。いずれも魅力の尽きないテーマである……
などなど。ベケットとポルトガルのつながりというのも、なかなか深いものがあるのだなあ。この本は旅の楽しさも巧みにからめているようなので、読みやすいかもしれない。いずれ読んでみたいものだ。どなたか買ったら貸してくだされ。
それはおいて、「……この本は途轍(とてつ)もない広がりをもっている。このような魅力的な本が出る時代になったのだ」と、この書評は大絶賛で結んでいる。書評委員の富山氏は、青山学院大の教授。著者の堀真理子氏も同じ大学の教授。いずれも英米文学。なんだか手放しで身内の宣伝をしているような印象を受けてしまう。毎日新聞の書評欄が持ち味とする、自由闊達さのゆえか。